物事を伝承するには様々な方法がある。文字がないときは口伝で、そして文字があれば紙に記録する。人間は太古より何らかの形で、物事を次世代に伝える努力をしてきた。その積み重ねが現在の文化をつくっている。それでは、建物の場合はどうだろう。千年という途方もない時間のなかでどのように残していくのか。その一つの解答が、伊勢神宮の「式年遷宮」のように、“建て替えを繰り返す”ことで、建物の形や技術を伝承する方法である。神社の建築では、伝統的に「仮設」を基本としている。年限をもってつくる社は、行事が終了すると壊すものが多い。これは、木材にやどる魂を尊び、行事が終わると自然に戻す自然崇拝のあらわれなのかもしれない。伊勢神宮の式年遷宮は、千三百年間もの長きにわたり行われ、現在まで六十回も続いている。建物の形式は、「神明造り」という古典的な神社本殿形式を貫いている。まさに千年建築である。神宮は、皇大神宮(こうたいじんぐう、内宮ないぐう)と豊受大神宮(とようけたいじんくう、外宮げぐう)からなり、内宮は六九〇年、外宮で六九二年を最初の建て替えとした。初期は、十九年に一度を原則としていたが、一三二〇年代より、二十年に一度を原則として遷宮が行われてきている。
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